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南十字星に口紅を
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7日目(1)
7日目、風が二人を再開させた。
アルパインスタイルで登坂を始め簡単なキャンプを
設営してそこで重装備に着替えてから7日目。
風が二人を再開させた。


悪コンディションの中を進み前人未踏の西壁を登り切る。
頂上へと。下山へと。
山岳事故の80%は下山の時に起きる。
やはりその確率のように事故が起きた。
滑落、骨折、ジョーはクレパスへ。
サイモンはザイルでサインを送るが反応がない。
サイモンに囁く声が聞こえてくる。
ジョーを置いて下山しろ、悪魔が囁いた。
しかし、できぬ。
救出に全力を尽くすがやはり反応がなかった。
底なしのクレパスに彼は落ちて死んだのだ。
泣く泣くザイルをナイフで切断して命綱を切り放した。
サイモンは一人で下山するが地獄のような行くてが待ち受けている。
天は我々を見離した、そう思った。
自分も助からないだろうと覚悟は決めたがそれでも進む。
ザイルを氷河までたらしそれをたよりにゆっくりと壁を降りていく。
途中、ジョーの落ちた底なしのクレパスの横穴を見た。
サイモンは大きな声で何度も名を呼ぶが返事はなかった。
やはり彼は死んだ。
天は我々を見離した。
氷河に到達した、ただでさえ危険な氷河の歩行をただ一人で
進む、クレパスとの戦い、地獄の道だ。
サイモンはやりとげ生還へ大きく踏み出した。
へとへとになりながらも危険地帯を抜けた。

キャンプでは一人の案内人が待っていたが二人とも戻ってこない。
期日はもうすぎているのに二人とも戻ってこない。
遭難したのだと直感した、遭難したら二人ともとても生きていられない。
しかし何かに導かれるようにここから下山してくるだろうと
思われるところにキャンプまで同行の案内人は向かった。
そこで出会った、サイモンと出会った。
サイモンは生還した。奇跡が起きたのだ。
サイモンは体を休め、回復してきたがキャンプから去ろうとしない。
まだジョーの生存を信じていたのだろうか。
儀式はまだ終わっていない。

死んだはずのジョーはクレパスの中で生きていた。
骨折した足の痛みに耐えながら絶望と孤独の中で生きていた。
疲労凍死、坐して死を待つか、前進して活路を開くか。
前進して活路を開くを選んだ。
一か八かの勝負を活路に選んだ。

Mariah Carey - Santa Claus Is Coming To Town


あきらめない、決してあきらめない。
ネバーギブアップ!ネバーギブアップ!!
ネバーサレンダー!!ネバーサレンダー!!
やがてやわらかい風が吹く。
風がはこんでくれる。


         つづく



ほな さいなら
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