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南十字星に口紅を
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土壇場
雨が降り続いておりますがいかがお過ごしどすか。

小雨の降る暗い日である。
羽織紋付袴姿のコロたんがゆっくりと歩いている。
名刀「備前長船景光」(小竜景光)を腰にさしている。
右手には名刀「和泉守藤原兼定」を紫の刀袋に入れ大事に持っている。
さあ着いた、お役場に着いた。
控えの間で控え、時間となった。
控えの間から出てきた時には白装束の姿となっていたのだ。
手には先ほど携えてきた「和泉守藤原兼定」を持っている。
ゆっくりと神を見るが如くに向かった。
行く手には刑場が控えている。
この世の果ての土壇場である。
そこで控えし者を仏様を見るまなざしで見ているのであった。

Ray Charles - Hit the Road Jack on Saturday


仏様を見るまなざしで見ているの者は誰であるのか。
山田浅右衛門コロたんであった。
代々続く山田浅右衛門家7,5代目のコロたんであった。
人は首切り浅右衛門とも呼んでいる。
名刀「和泉守藤原兼定」はとある大名からの依頼で預かった人切り包丁であった。
刑の執行の時がやってきたのだ。
一人目は天下をひっくり返す事をたくらむ大罪人と言われてい不定の革命浪人であった。
山田浅右衛門7,5代目コロたんは彼のひざまずいた姿から彼の胸の内をよんだ。
ためらいも欲も未練もないなかなかの人物である。
生きていてもらいたい人物であるが天下変動のいい死に場所の時を得たのだろう。
覚悟立派でござる。
一礼して「和泉守藤原兼定」を振り下ろした。

二人目は女であった。
この女が天下を騒がしたあの毒婦おでんなのか。
おでんでも食べて毎日宴会でもやっていればよかったのだと思ったのだが。
だが、胆力のある腹の座りきった女であった。いや人間であった。
行く道が違えば後世に名を残す女将となったであろう。
山田浅右衛門7,5代目コロたんはそう思ったのだった。
右手で合掌して「和泉守藤原兼定」を振り下ろした。

3人目は強盗殺人犯であった。
全身がブルブルと震えている。
小者である。
目礼をして「和泉守藤原兼定」を振り下ろした。

4人目はまたもや天下をひっくり返す事をたくらむ大罪人の不定の革命浪人であった。
かなりの大物だと聞いていた。
ひざまずいた姿から彼の胸の内をよんだ。
迷いがある、恐怖がある、欲がありすぎた、この世に未練がありすぎる。
道ずれにされた者が数多くいるのであろう。
天下騒乱の時代の人物ではない。
天下泰平の時ならばかなり出世する人物であろう。
評議会員でも藩知事になれるであろう。
だが天下を取れることはないであろう。3流の人である。
そう山田浅右衛門コロたんはこの人物を見きった。
目を見開き「和泉守藤原兼定」を振り下ろし引導をわたしたのだ。

土壇場の人知れずの刑場の念どした。
山田浅右衛門7,5代目コロたんは過去も現在も未来も存在しておまへん。
空想ではない、念である。
この念はどこで知ったのか。
それは一冊の思いを込めた実録的小説であった。
「斬」。
小説家の綱淵謙錠さんの『斬』。
どした。
もう一度、何度でもよみかえしてみましょう。
まったく違った世界が新しく観えるかもなぁ。


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